転勤
「この3月で、私は転勤になるんです」 (T医師)
と。 妻も私も、一瞬言葉を失った。 折角巡り会えた、信頼できる医師を受診できなくなる(かも知れない)のである。 妻は、言葉を絞り出す様に、
「どちらへ転勤されるんですか?」 (妻)
と尋ねた。
「○○です。 でも、田舎の方なんです。 島じゃあ、ありませんけど・・」 (T医師)
と、T医師は答えた。 ○○なら今の総合病院からそう遠くないので、年に数回の受診は可能である。 しかし、田舎の方となると、交通手段の問題もある。
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そんな私達の不安を察したのか、T医師は
「今度(私の代わりに)来る○○先生は、大学の学年が私より一年上の女性で、○○さん(私の事)の様な患者を、その分多く診ているんですよ」 (T医師)
と、フォローしてくれた。
更に、今回の血液検査の結果も次回診察時に説明してくれる様、新任の医師に伝えてくれると言う。 逆に、私達にこんなアドバイスもくれた。
「次回の受診時に、発症当時の写真があったら持参してみて下さい。 私は表情の変化を診ていますが、新しい先生は分からないでしょうから。」 (T医師)
つまり、表情の変化というのは中々定量的に表現しにくい項目ではあるが、病状の変化を見る上で、重要な臨床上のポイントらしいのである。 そういえばT医師もことある毎に、
「表情がよくなりましたねぇ・・」 (T医師)
と言っていた。 自覚は余りないのではあるが、以前も妻がそう言っていた。 客観的には、そうなのかも知れない。
そしていよいよ、最後の処方箋を切る段階となった。