セカンドオピニオン―用語の統一と鑑別のための問診
「私が本日のセカンドオピニオンを担当します、○です。 この病院では、パーキンソン外来を担当しています。」
オスキーの教科書通りである。 向こうは我々の素性を知っているので、単に、
「××です。 本日は、宜しくお願い申し上げます」
と言うに留めた。 そして、早速○医師による説明が始まった。
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「最初に、用語の統一をしておきましょう。 パーキンソン病(PD)とは中脳の黒質部にある神経細胞が ・(略)・ する疾患で、臨床的には4大症状と言って ・(略)・ を呈するものを言います。 一方、パーキンソン症候群(PS)と言うのは病名でなく、これらの4大症状の内 ・・」
と、説明を始めた。 そして
「PD発症の原因は不明のものが多いのですが、損傷を受けた神経細胞では ・(略)・ 酸化的ストレスなどによるミトコンドリアの変性が観られます。 遺伝的素因のあるもの、つまり家族性のものでは ・(略)・ 一方、PSでは原因として脳血管障害によるもの、薬剤の副作用によるもの、重金属等による中毒性のもの ・・」と続いた。
私は、テーブルの上の時計を見ながら焦ってきた。 これだけで15分も経ってしまったからだ。 15分毎にいくら・・と言う料金体系だからだ。 分かりきった事に時間を使って欲しくない・・
かと言って、一生懸命説明している専門家に失礼な事も言えない。
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そして漸く、本題に入った。 と言っても、先ずは鑑別のための問診である。 もちろん、PDの可能性を否定するためだ。 例えば、
? ①発症時期と経過、②初発症状、③自律神経の損傷、④精神症状や認知症の有無、⑤薬剤に対する反応性、⑥症状発現の左右対称性
等である。
賢明な読者諸氏からは蛇足の誹りを受けてしまうが、一応解説すると、夫々の鑑別ポイントは以下の様になろうか?
? ①発症時期は4年前、歩行異常になったのは2年程前。 (PDにしては、緩徐)
? ②歩きにくさが初発症状で、今も歩行障害が主訴。 (PDでは、後期に出現)
? ③便秘、異常発汗、立ちくらみ等の自律神経症状が無い。 (PDでは、頻出)
? ④夜中に大声を出す事もなく、幻視・幻聴もなさそうだ。 また、これだけ書ける(=質問を纏められる)ので痴呆もない。 (PDでは、出現する事も多い)
? ⑤L-DOPA製剤(マドパー)への反応性が乏しい。 (PDでは、著効)
? ⑥左右対称に発現している。 (PDでは一側性から両側性に)
つまり、こう見る限りではパーキンソン病ではない。 また③から、多系統萎縮症でもなさそうだ。