診察201309―2
(3) ジェネリック医薬品について
? ビ・シフロールのジェネリックが承認されたらしい。
? 効果・効能が同一であれば、経済的な負担の少ないジェネリックの処方を受けたい。
これに対し、S医師はジェネリックをこう評した。
「人によって、効果が違うんですよねぇ・・」
まぁ、医師によってジェネリックに懐疑的/否定的な意見の人もいるだろう。 もしその理由が薬剤側にあるとしたら、S医師の考えに肯首できる。
ただ、疑問は製造承認のプロセスである。 ジェネリックといえども、立派な「医薬品」。 承認を受けるには、PhaseII(患者での有効性)試験やPhaseIII(先発品との治療効果の比較)試験を経ているハズである。
同じもののハズなのに、薬効に差がある? S医師の言葉を聞いて、こんな話を思い出した。 それは、解熱剤のアスピリン(アセチルサリチル酸メチル)の昔話である。
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その昔、日本はドイツのバイエル社からアスピリンを輸入していた。 当時の製薬会社にとって自社製造が悲願であり、製造プロセスの開発を大学の研究室に委託をしていた。
そしてある時、遂に研究室で同等品が完成した。 吉報を受けた製薬会社は、早速臨床試験に入った。 所が・・
効かないのである。 明らかにドイツ製より劣るのである。
それを聞いた大学側は、何が違うのか一生懸命分析した。 しかし、どんなに分析しても、差は見いだせなかった。
結論は、
「流石はバイエル、やっぱり本場モンは違うよなー!」
と言う事になった。
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賢明な諸姉諸兄は、お気づきだろう。 違いの原因は、Polymorphism(結晶多形)だった。
では、ビ・シフロールの場合は? 純度に問題はないのだろうか? いや、化学的純度の問題でなく、光学的純度である。 ビ・シフロールには、不斉炭素が一つあるので、R体とS体が存在する事になる。 そして両者で薬効に差がある事が知られている。
バルクの殆どが中国製だけに、心配だ。 まさか、サリドマイドの様な事(光学活性体の一方に薬効があり、他方には催奇性がある)にはならないとは、思うが・・