診察201112-6
「先生、赤い靴・・ 可愛いですね!」 (妻)
私がI医師の靴に目をやると、真紅のパンプスを履いていた。 これに対してI医師は次の様に応えた。
「あら、これ? ・・ この前なんか、ここ(靴)にファーの付いたのを履いて来たら、患者さんが『先生! それを見るだけで(病気が)良くなりそうです!』って言っていたのよ。」 (I医師)
女同士のファッションの話が少し続いたが、男である私は口を挟まなかった。
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I医師は診察に戻り、私に便秘(自律神経の障害)の有無を尋ねたが、無い旨を答えた。
そして、私の病気に対して、こう評価した。
「4つの内、1つしか出ていないのよねぇ。」 (I医師)
つまり、パーキンソン病の4大症状の内、歩行障害しか症状が見られないと。 前任のT医師は、「2つから2つ半」と言っていたので、医師により評価が随分異なるものだと思った。
つまり、T医師はパーキンソン病に近く、I医師はパーキンソン症候群に近いと考えているのかも知れない。 それは、I医師のこんな言葉にも表れている。
「パーキンソン病の患者さんって、歩けない人は、本当に歩けないのよ!」 (I医師)
私の場合は、意識をすれば(少し癖はあるものの)普通に歩ける。 (これは妻がI医師に、私の会社での様子を話したからだ。) でも、家では柱や家具に倒れ込む事もある。
「だからと言って、(出来る事を)家でやらないのは、違うと思う!」 (I医師)
一日会社で働いて、疲れて家に帰ってまで、緊張はしたくない。 家ではリラックスしたいと思うのは、いけないのだろうか?
それに薬効の波もあるので、やろうと思ってもできない時もある。
「でも、それは違う!」 (I医師)
と、強い口調で言うのだ。 それが出来れば病気ではない、出来ないからこそ病気なのである。 I医師が激励の意味で言っているのは、私は十分理解しているが、患者にとっては時として叱責にしか聞こえない事もある。
そこには今までI医師が私達の前でみせた事のない「感情」が入り込んでいたと思えた。 それは既述の
「意味、分かんな〜い」 (I医師)
と言う不快感を引きずっている様にも聞こえたからでもある。