診察201112-5
「これを、目だけで追って下さい」 (I医師)
と言いながら、それをゆっくり左右に振った。 続いて上下に振ったが、もう一度上に振り、私の目に視線を合わせた。 私が上を見た時、下の瞼が痙攣していたらしい。 でも、特別のコメントは無かった。
続いて、I医師は私の両手を取り、前に伸ばさせて手を離した。 つまり、「前へ倣えっ!」の格好だ。 そして、
「目を瞑って下さい」 (I医師)
と促した。 パーキンソン病に特有の、手の振戦の有無や定位能を調べたのであろう。
更にI医師は、私の左右の肘と手首をグルグルと廻した。 これもパーキンソン病に特有の、歯車様固縮の有無を調べたものだ。 その後、人差し指で、私の手の親指の付け根をくすぐった。 何かの反射を診たのだろう。
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次は、指鼻運動(小脳のテスト)である。 今回は、I医師は自分の指を私の顔から離れた位置に置いた。 もう一つの違いは、左右の指で行わせた事である。 自分としては、完璧にできたと考えている。
その次は歩行試験だ。 これこそが主訴であり、診断の中心である。
I医師は診察室の隅に行き、私を招いた。 きっと、椅子から立ち上がる様子も診るためだろう。 そして私が起立し室内を歩くと、I医師は私を止めて背後に立ち、こう言った。
「私が肩を引きますから、耐えて下さいね。」 (I医師)
そうして両手を私の両肩に乗せ、クッと引いた。 私は難なく耐えられたが、今回は1回だけだった。 過去にもう何度もやっているので、1回で十分(重症度が分かる)のだろう。
I医師と私は椅子に戻ったが、I医師は納得が行かないのか、再度、肘と手首の固縮の有無を調べたのであった。
すると、その様子を見ていた妻が、意外な事を言った。