診療002―201810―2
私の主訴は歩行障害であるが、どうもf医師の話しを聞いていると、歩行障害には2種類ある様だ。 それは、歩き始めの問題と歩き途中の継続の問題である。 まぁ、言ってみれば、「歩行開始障害」と「歩行継続障害」であろうか? 前者は、俗に言う「すくみ足」と言うモノだ。 後者が「狭義の歩行障害」(特に、突進歩行)とでも言うべきか・・
後者に対してf医師は、聴覚キューと視覚キューを提案した。
聴覚キューとして、f医師は電子メトロノームを提案した。 そして、その設定について、
「速度を(♩=)70にすると、丁度いいんですよ」
と教えてくれた。 実際、♩=70で歩いて見ると、かなりユックリだ。 これくらいユックリ歩けば、杖は要らない。 更に、f医師は提案した。
「楽器屋に無くても、Amazonで売っていますよ」
と言うので、私は
「スマフォのアプリケーションで、(メトロノームが)ありますよ」
と言った。 例えば、「サウンドコルセットチューナー&メトロノーム」と言うのがあるが、結構、使い勝手も良い。 実際、使って歩くと、杖は不要だった!
――――――――――――
以前、f医師は、この方法の提唱者に、
「やって見たけれど、効果が無かったよ・・」
とクレームを付けた事があったらしい。 すると、その提唱者に
「『1日8時間、聴かなきゃだめだ』と言われちゃったよぉ・・」
と笑いながら言っていた。
――――――――――――
階段の昇降についてf医師は、
「どうですか、階段の昇降は?」
と質問した。 これに対し、妻が反応した。
「えぇ、大丈夫みたいです。」
「そうですかぁ・・ パーキンソン(症候群?)の人って、割と階段は大丈夫なんですよね!」
「どうですか、昇る時はよいけど、降りる時、危なく感じた事はありませんか?」
と私の方を向いて訊くので、私が
「別に・・ 大丈夫ですが・・」
と答えると、f医師はボールペンを水平に持ち、私の眼の高さまで持ち上げて、2~3度、ユックリと上下させた。 私は顔を動かさず、目だけで追った。 するとf医師は、その様子を見て、聞こえるか聞こえない位の小声で、独り言の様にこう評した。
「(う~ん、少し(私の視線の)追従が、遅いかなぁ・・)」
と。 これは、進行性核上性麻痺の典型症状である「下方注視障害」を示唆している。