パーキンソン病/症候群の闘病記です。 同病の方々のご参考になれば幸いです。

idやURLのPSPとはパーキンソン症候群の中の進行性核上性麻痺、PAGFとはPSPの非典型例である純粋無動症の事です。

リハビリ425―女性作業療法士・T嬢

 

さて、5月下旬の今日は、午後から①作業療法、②理学療法、③診察のある日だ。 そこで、先ずはリハビリをこなそう。

 

いつも通りの手順で受付と予診を済ませて、待合椅子に座って待っていると、女性の声で、

 

   「〇〇さーん?」

 

と呼ぶ声がしたので振り向きながら返事をすると、

 

   「本日の作業療法を担当します『T』と申します」

 

と言うカワイイ女性がいた。 髪を後ろに1本に束ね、丸顔で、身長は女性の平均身長よりは、若干低いだろうか?

 

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では、彼女の施術の内容の一部を紹介しよう。 それは、丸くて薄い(≒直径25cm×深さ5cm程の)缶に入った20個程のお手玉を使ったものである。

 

実は、私は以前、それを使ったリハビリを見た事があった。 台に腰掛けた老婆が自分の孫の様な(年代の)女性作業療法士に促され、患者の1m程目の先に置いた缶に投げ入れて行くのである。 それが傍目には、積極的に取り組んでいる様には見えなかったのである。 

 

   「(何か、おもしろそうだなぁ・・ )」

 

と言うのが、私の第一印象であった。 と言うのも、確率良く入る様になると缶を、少しずつ患者から離して行くのであった。

 

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T嬢は、台に腰掛けたままの私の正面に立ち、缶の中身を台の上に空けた。 すると彼女は空缶を私の眼の高さに持ち、私を見た。 きっとそれは、

 

   「(準備OKよ! さあ、お手玉を缶に入れて頂戴!!!)」

 

という合図に違いない ・・ と思い、私は右手でお手玉を斜め(仰角60度位)に加速し、缶を見たままの視野に入ってから、軌道を確認/修正して行った。 すると、お手玉は、放物線を描いて缶に吸い込まれて行った。 

 

続いて彼女は、缶の位置を次々と変えて行った。 私はお手玉の投げる角度、スピードを替えて、追従した。 その結果、約半分を投げ終えた時点でほぼ缶内に入ったが、2個程が

缶の縁に掛かった。 ま、それでも、床に落ちたのは皆無だった。

 

更に彼女は缶を置いて、両手で水を掬う様に、お椀の格好を作った。 つまり、今度は彼女の両手の中に、お手玉を入れよ・・と言う意味だ。 勿論、彼女は手の位置を次々と変えて行った。

 

最後に、彼女はこう呟いた。

 

   「こっちの方が、イイわねぇ・・ (お手玉を)投げ入れられないから・・」

 

つまり、缶にはお手玉を投げ入れるのではなく、そっと置きに行かなければならなかったのだ!!!

 

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私だったら、

 

   「違いますよ、〇〇さん? お手玉は缶に投げるんじゃあなくてぇ・・」

 

と言ってしまいそうである。 しかし、T嬢は患者のする事を否定せず、『どうやったら、患者が目的の動作をしてくれるか』を考えていたのであった。 私は、自分が投げ入れている時も、彼女が笑顔だったので、それで良いと思ってしまった。

 

患者が違う事を行っても変な表情一つせずに、患者に合わせる ・・ 中々出来るものでもない。 しかし、彼女の笑顔を見ていると、その違う事さえ、自信を持ってしまう・・ そんな不思議な魅力のある笑顔である。