ハビリ175―「凄いじゃぁ、ないですか!」
続いて、M士による作業療法を行なった。
M士は私を、テーブルに案内した。 そこで私は前回の宿題の紙を見せた。 大きなマス目に名前を書く練習だ。
すると、M士はそれを見て
「凄いじゃないですか! 今まで私が担当した中で、2回目でこれ程までに・・」
と、賞賛してくれた。 それを聴いて、何だか私も嬉しくなってきた。
(ようし! 次回はもっと上手に書いて、もっともっとビックリさせてやろう!!!)
と思えて来るから、不思議だ。
リハビリに携わっている人は、皆、「ほめ上手」でもある。 仮に目標が達成できなくても、決して否定的な事は言わない。 でもこの時のM士の驚きは、本当だった様である。 その証左に、毎月初めに書く「リハビリテーション総合実施計画書」を見せ、
「ほら、(理学療法担当の)Oさんより、上手ですよ!!!」
と、評価してくれた。 そして、次回までの宿題の紙(マス目の用紙)を奥の部屋から出して来て、
「じゃあ、今度はもう少し小さいマスに書いてみましょう」
と言いながら、渡してくれた。
―――――――――――――――――――――
次は、課題だった箸である。
M士は棚から箸と乾燥したマカロニや干瓢片を出して来て、私がその箸でつまむ様子を観察した。
「どんな時に、こぼし易いんでしたっけ?」
「食事をしていると、段々手に力が入ってこなくなるんです。 姿勢保持障害みたいに、一定の力を維持するのが難しい(病気な)のです。」
「そうですか・・ じゃあ、箸の問題ではなさそうですねぇ。」
と言いつつ、私の右手を取り、掌を後ろに曲げた。
「食事途中に、こんなストレッチをやってみて下さい。 モノを掴む筋肉は、ここなんです」
と言いながら、浅指屈筋の辺りを指した。 このストレッチが宿題となった。