バレてしまった!
妻と私は椅子から立ち上がり、ジャケットを着用して手荷物を持ち、I医師にお礼の挨拶をした。 そして診察室を出て、扉をそーっと閉めながら退室をした。 約30分間の診療時間であった。
後で妻が教えてくれた事であるが、私が退室する後ろ姿を見たI医師が、妻の肩をチョンチョンと叩いて、呼び止めたらしい。 そして、
「あの歩き方(が普段通り)ね!」
と言い、小さくOKサインを出した様だ。
患者は医師の前では、意識して正常っぽく歩いて見せる傾向がある事は、百も承知なのだろう。 一本取られてしまった。
こうしてT医師の個性に勝るとも劣らない個性の持ち主・・と言う印象のI医師による診察が終了した。
後は窓口で会計書類・処方箋・次回予約票を受け取り、受付で会計を済ませた。 その請求金額を見て、驚いた。 410円である、たったの・・ 本人負担は3割であるので、保険診療額は推して知るべし。
その後院外薬局で処方を受け、帰宅した。
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T医師の話をI医師としていて、急にT医師の事が気になってきた。 調べて見ると、確かに○○の×川病院の外来を担当していた。 担当日数と時間帯から推して、その病院でも非常勤であろう。
待てよ??? T医師・・と言えば・・
初診ではあるものの今回の診察で、I医師の口から「パーキンソン病」と言う言葉は出たが、「多系統萎縮症」の、「多」の字も出て来なかった。