咳が出る
余りにも続くので、近所の開業医にかかった。
医院の入口や待合室は広いので、まぁ、普通に歩けるのだが、診察室ではすくんでしまった。 入口は狭い、患者用の丸椅子は、座るのに不安定そう・・ それでも受付に「お薬手帳」を出しておいたので、医師はパーキンソン病だと理解している様だ。
やっとの思いで丸椅子に座り、問診と聴診を受けた。 呼吸器系の主訴なので、聴診は丹念だ。
「喉に赤みはないですし、肺にも雑音はありません」
と評した。 受診直前に測った体温は36.7℃で、熱は無い。 オマケに診察室は暖かいので、咳は出ない。 つまり、顕著な他覚症状が無いのである。
医師は、
「それでは、お薬を出しておきますねぇ・・」
と言い、棚からオレンジ色の表紙の本を取り出した。
「マドパーとは大丈夫(=配合禁忌ではない)ですし・・」
と確認し、診察を終えた。 私が不器用に身支度を整えていると、医師は
「一人でいらっしゃったんですか? 杖は使わないのですか?」
と案じてくれた。
だどたどしい足取りで診察室を出ようとしたら、またしても動作が不安定だ。 看護師に支えられて診察室を出た段階で、
「後は大丈夫です。 歩き始めが難しいだけなんです」
と、制した。 そして廊下を平然と歩いて見せたら、看護師は
(あら、本当!)
と言う驚きの声を漏らした。