青森に紅葉を訪ねる―9(青函連絡船 八甲田丸)(続)
と言うのは、縦に筋の入ったモノクロ画像が、時の流れを感じさせるからである。 きっと、元は16mmフィルムなのだろう。 その上映時間は20分程であったが、十分に楽しめた。
続いて狭い階段を登って、4Fのブリッジに行った。 操舵室からの眺めは、最高である。 眼下に広がる青森湾の先には、ボンヤリとした半島が左右に見えた。
そこには操舵のシミュレーションゲーム機があった。 試しに船を運転してみると、結構難しい。 その理由は、自動車と違って、慣性が大きいからである。 昔、海を航行するタンカーが急停止を掛けてから実際に止まるまで、12km走行する・・と聞いた事があったが、納得できた。
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その他、3Fの記念館には貴重な資料や模型も展示され、館員の説明があった。
この説明が、また上手なのである。 扇子を持って講談でもさせたい位だ。 時は明治から大正に変わろうとしていた頃、北海道への輸送路を確保する必要性から生まれ、戦争を経験し、物資の大量輸送を一手に引き受けた高度成長期を経て、青函トンネルにその役割を譲るまでの、一代記である。 歴代の連絡船の役割・特長・装備等を、時代背景と共に、熱く語ってくれた。
まるで歴史の生き証人のごとき雄弁に途中誰一人立ち去る者もなく、皆が聞き惚れていたのは、間違いない! 彼を単なる説明員にしておくのは、勿体無い・・
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船を出ると、海を臨む広場にある大きな石碑の前に人だかりが出来ていた。 「津軽海峡冬景色」の歌碑である。 背後のスピーカーから歌も流れる仕組みになっていた。
さて、八甲田丸の見学を1時間程で終え、バスは今回の旅行のハイライトである八甲田山へと向かった。 この時、心は早、八甲田山ロープウェイとその頂上から見た紅葉に馳せていた。