リハビリ382―親切な女性(ひと)
で、7月中旬、リハビリの予約日に、妻の運転で総合病院に行った。 例によって病院入り口の二重ドアの間に置いてある外来用車椅子のロックを外し、座席を広げてハンドルを持って院内に入ろうとした。 すると前屈みになるので、「オットット」となってしまった。
そんな私の危うい様子を見ていたのだろう、40代と思われる女性が近づいてきて、
「どちらまで、行くんですか?」
と言いつつ、車椅子を抑えた。 そう、車椅子に乗った私を目的地まで連れて行ってくれるらしい。 私が、
「カード(診察券)を入れる(機械のある)場所まで・・」
と言ったのだが、どうも通じなかったらしい。 私を総合案内に連れて行った。 すると、受付の女性が、本日の用件を訊いた。 私は答えた積もりなのだが。声が十分聞こえなかったのだろう、
「今、そちらにゆきますねぇ」
と言って、カウンターの内側から出て来た。 するとそんな受付嬢の行動を見た女性は、去ろうとした様だった。 私は礼を述べようとしたが、車椅子に乗っていては死角になるので、女性の顔は勿論、体格も服装も分からなかった。 私がその状態で出来る事と言えば、目一杯後ろを向いて頭を下げる位である。 まぁ、「目一杯」と言っても真横を向くのが、精一杯だったが・・
受付嬢は、私にカード(診察券)の有無を尋ねたが、
「連れが持ってます」
と答えると、
「お連れさんですか?」
と更に質問を重ねた。 私が、駐車場に車を置きにいっている旨を答えたら受付嬢も納得し、漸く解放された。 やがて妻が現れ、妻の介助で外来リハビリ室に向かったが、その前に先程の受付嬢に礼を言おうと受付のブースを見たが、彼女の姿は無かった。
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さて、リハビリ室でいつものM医師の予診を受け、私達は待合用の椅子に腰掛けて担当のI士を待った。 その間、私が妻に先程の一部始終を話し、
「世の中、親切な人がいるモンだねぇ」
と言うと、妻は
「きっとその女性(ひと)は施設のヘルパーさん(介護職員)か、家族に車椅子の人がいるのね」
と言った。 私は、まぁ、それなら前者だと思った。