日光へ―3
いよいよ「日光さる軍団」による演劇の開始時間が近づいた。 園内に集合場所を知らせるアナウンスが流れ、観客が三々五々と集まった。 そこで予め貰った赤いプラスチックの札を係員に渡して、入場した。 ボードを見ると、札の色により、入場の順番が決まっている様だ。
さて、劇場に入ると正面に緞帳の掛かったステージがあり、そのステージを中心とした同心円にベンチが並んでいた。 そう、ざっと300人は腰掛けられ、その後ろに、立見席がある。
今回は平日の最終公演と言う事もあり、総勢でも40人程度。 ほとんどの観客が最前列か2列目に座る事ができた。
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場内放送で撮影禁止・禁煙・緊急時の脱出口の案内があり、場内の照明が落とされて、開始となった。 太郎次郎の後継猿は5歳程の子猿であったが、6頭共良く演目をこなしていた。
演目の合間には16歳の中堅猿が、女性と息の合った軽妙なコントを演じた。 それらの内容は、ネタバレとなってしまうので、ここでは伏せる。 ただ、何れも抱腹絶倒ものであった。 少なくとも、観客(人間)には・・
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さて、劇が終わると、屋外でたった今演じた子猿達と接する機会が設けられ、色々な質問が投げかけられた。
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例えば、
「この子達は、一日何時間位、練習してるんですか?」
「もし紐を解いたら、猿は逃げちゃうんですか?」
「猿はボスを頂点とする社会を形成するって聞いたけど、人間をボスと思って訓練(指示)に従うんですか?」
等である。 印象的だったのは、最後の質問に対する回答だった。
「いえ、違うんです。 訓練の時は、猿達は立って待っているのですが、芸に成功すると、台に座らせるんです。 すると、見て順番を待っている猿は、『あぁ、ああやれば座れるんだ』と思うのです。」
つまり、猿達は立っている苦痛から逃れるために、人間に従っているのだ。 観客には楽しい時間であっても、猿にとってはそうではないのだ。 人間のエゴというか、動物虐待というか、そんな事を考えていると、心底楽しめない。 (終)