診察201302―1
ほぼ予約時刻に看護師に呼ばれ、診察室に入ると、I医師が笑顔で迎えてくれた。 そして私は、この7週間の病状の変化を、メモで報告した。 それを読み進む内に、I医師の表情が緩み、笑みがこぼれてきた。 そこには、こう書いておいた。
? 症状は概ね安定し、特別困った事や転倒事故もない。
? 義妹や周囲からは、「○○さん、随分良くなったね」と評価された。
I医師は、メモを見ながら質問し、妻と盛り上がった。
「これ(?)って、お正月(に会った時)の事?」
「いえ、うかい鳥山に行った時に・・です。」
「うかい鳥山って、高尾の?」
「ええ・・」
「あそこって、凄い(=素晴らしい)トコよねぇ、一度しか行った事無いけど?」
「ええ、大勢で出かけたんです。」
「あそこ・・ 歩けたの?」
「ええ、少し小走り気味でしたが・・」
「そう! それは凄いわねぇ。 両脇に池とかあったでしょうに?」
漸く、私が発言するチャンスが来た。
「先生、何て言う事無いんですよ。 ただ、中居さんが料理を運んでいる時は、立ち止まって待っていましたけど。」
話の様子では、うかい鳥山の庭園を歩く事は、パーキンソン病患者にとっては、試練らしいのだ。 確かに、橋あり、池あり、段差あり。 オマケに飛び石もあったし、山陰(やまかげ)では、斜面からの湧水で舗装の上に氷が張っている場所もあった。
水芭蕉園の中を進むには、平均台(と言っても、幅は40〜50cmはある)の上を歩かなければならない。 勿論、両脇にはロープが張ってあるが、とても体重を支えられるものではない。 万が一、平均台の上でバランスを崩せば・・