リハビリ186―水彩画(続)
私がいざ絵の具を出そうとすると、M士が制した。
「その前に、これに名前を書いてみて下さい。」
と言って紙とボールペンを 机の上に置いた。 きっと習字とのギャップが大きかったからであろう。
早速書くと、昔の字に戻ってしまう・・ ジェルタイプのボールペンは筆圧が無くても書けるのだ。 その昔、「証券用」と言う、高い筆圧が必要な、固い「書き味」のボールペンがあったが、あれなら練習の成果を発揮できそうだ。
さて雲海から突き出た富士山であるが、山には強いコントラストがある。 つまり、朝・夕の時間帯の富士山かと思われた。
そこで水彩画の鉄則に基づき、背景である空から塗った。 パレット代わりの皿に白色と水色の絵の具をだし、筆に水を付け、2色を混ぜながらグラデーションの空にした。 本来、次は山であるが、雲海に取り掛かった。 手前の雲は淡めに、そして雲の輪郭を濃いめにして、雲に奥行を出して行った。
話しは前後するが、塗り絵の準備途中、M士が、
「こちらの研修生も、一緒に宜しいでしょうか?」
と訊いた。 ぽっちゃりした感じの女性である。 もちろんOKした。
仕上げは富士であるが、朝の印象を出すためにごく淡い橙色で塗った。 俗に言う「赤富士」である。 そして、赤富士に照らされた雲海の縁に赤味を添えた。
これでほぼ完成である。 仕上げに、水だけで「色むら」や「塗りむら」を無くした。 すると今度は、M士は次の課題を持って来た。