訃報
そう言えば、Y社長の保険会社から代表取締役交代の葉書が届いていたのを思い出した。
「故TYの後任として・・遺志を引き継ぎ・・一層のお引き立てを・・」
差出人は姓が同じYの女名前のYなので、奥様と思われたのだった。 確か小学生位のお子さんがいたはず。 早速返事をしたためた。
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拝復 突然の訃報にただただ驚くばかりで、どうお返事を差し上げたら良いのか分からないまま、今となってしまいました。
思い返せばこの○月、自動車保険の切り替えでご連絡を差し上げました所、新しい方にご担当頂ました。 その時、「(事業拡大に伴い、新しい社員が入社した)」とばかり思っていましたが、もしかしたらその時、T様は既に病床に伏していたのかも知れません。
故T様には、長年に亘りお世話になりました。 毎年保険の更新時には、明るい笑顔でご訪問並びにご対応頂ました。 もうあの笑顔に会えないと思うと、寂しい限りです。
Y様におかれましては、どうかお力落としのありません様、T様の想いを継いで頂ければと考えています。
敬具
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すると、数日してY新社長から、挨拶を兼ねたお礼の電話があった。 その様子は明るかったが、気丈にふるまっているとしたら、一層悲しい。
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さて、新担当のT氏が自宅にやって来た。 保険の契約や代金の支払いが一通り終わったので、訊いてみた。
「あのぉ・・ T.Yさんはご病気だったんですか?」
「いえ、突然だったんです。 前日まで私と一緒に普通に仕事をしていて・・
翌日、待ち合わせの場所に、なかなか来ないなぁ・・と思っていたら・・
いえ、事故でもありませんし、持病も無かったんです。」
それ以上は、聞けなかった。
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「新社長は、奥様なんですか?」
「そうです。」
「急に社長になって、保険の事などわかるんですか?」
「ええ、まだ自宅でやってた頃、ご主人の仕事を手伝っていましたから」
どうやら、会社も回って行けそうだ。
それにしても自分より若くて元気な人が急逝すると、何か不合理を感じる。 まぁ、自分もこうして病の身を抱え、いつお迎えが来ても不思議ではない。
そう思うと、某証券会社が配布している「エンディングノート」が気になってきた。