母の相続―4
さて、11月下旬の調停の日がやって来た。 今回は、遅刻しない様、少し早めに妻の運転で家庭裁判所に出掛けた。 すると、調停開始の25分前に着いた。 裁判所の前には、100人近くが寒い中、何かを待っている。 妻が入り口で守衛に「身障者用駐車場を使いたい」旨を伝えると、無線で駐車場の係員にコーンをどかす様連絡してくれた。
そこに車を停めて裁判所の正面玄関に入り、20分前に書記官に電話をしたら直ぐに車椅子を持って来てくれた。 そこで私は車椅子に乗り、妻の操作と書記官の案内で、申立人控室に行った。
控室は無人で、寒かった。 しかし、定刻近くになると、2組が入って来た。 片方は債権の取り立て、もう片方は離婚の調停らしい。
定刻になり、男性の調停委員がノックをしてドアを少し開け、
「どうでしょう、前回、相手方に宿題を出してあったので、先にそちらから始めた方が、車椅子で往復しなくて済みますが?」
と提案したので、OKした。
更に待つと、やがて女性の調停委員が呼びに来た。 調停室に入ると、男性の調停委員は次の様に切り出した。
「相手方は、お父さんの相続分と金額の明細を持って来ましたよ」
と言い、A4の紙をよこした。 これは、申立人である私の主張する金額と相手方の主張とが異なるからであり、その差は私が相続した土地の固定資産税分であった。 公租公課であれば、認めざるを得ない。
私が提示された内容に合意をすると、その旨を相手方に伝え、裁判官を呼んで和解調書を作ると言う。 そこで、一旦控室で待つ様に言われた。
10分程待って調停室に呼ばれると、そこには裁判官と(車椅子を持って来てくれた)書記官、そして相手方がいた。 我々が着席すると、裁判官が
「裁判官のHです。 それでは、合意内容として (中略) で宜しいですか?」
と訊いた。 まぁ、大筋で問題ないのでOKすると、相手方にも確認の上、
「では、一週間位で調書がご自宅に郵送されます」
と言い、閉会を宣言して退室した。 我々も調停委員に礼を言い、書記官に付き添われて正面玄関にて、礼を言って分かれた。
こうして、漸く父の分の相続が終わった。 母の分については、別途申し立てよ・・と言う事だ。 それなら、これまでのタイトル「母の相続」は、「父の相続」としなければならない・・
蛇足ではあるが、朝の入り口の雑踏は、強盗殺人事件の公判の傍聴券を求める人々だったらしい。 テレビで放送されたので、大勢集まった・・と、調停委員が言っていた。