リハビリ96―ゴムのタスキ
途中ヤボ用を足しながら、ほぼ予定時刻に病院に着いた。 今日の予診はいつものM医師でなく、例のトボけた医師である。 そもそも、規定の名札を着用していない。
暫くモニター内のウィンドウをマウスでスクロールして、
「○○さんですね?」
と訊いた。 どうやら、私の受診履歴を探していたらしい。 オマケに、
「(悪いのは)どちらの腕でしたっけ?」
と訊くので、動きの悪い、
「左です」
と答えた。 以前、正直に
『パーキンソン症候群による下肢の運動障害なんです』
と答えた事もあったが、余計時間が掛かるだけだった。 こうして予診を終えて待っていると、定刻前にO士が現われてリハビリの開始となった。
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早速空いている台を探し、待っていると、長いブルーの紐を探してきた。 ・・と思ったら、それはゴムであった。 O士は私の背後に回り、これをタスキに掛けた。 背筋が伸びる感じがした。 否、実際にピンと伸び、上肢の姿勢がシャキッとなった。
この状態で室内を歩いてみる様に、促された。 すると・・
歩き易いのである! その事をO士が訊いたので、
「歩き易いです。 背筋が伸びると、重心がちゃんと足の上に来るので」
と答えたら、こんな説明をしてくれた。
「(病気で)どうしても前屈みになりがちなので、こんな風になってしまうんです」
と言いながら、O士は自らの肩を落とし突進しそうな歩行をして見せた。