「沈黙のひと」第五章
所がいざ訪ねて見ると、後妻の華代が衿子に、生前の三國に対する不信感をぶつけてきた。 その中でも最大の不満は、自力歩行さえ盡ならない三國が、三日間不在だった事である。
衿子は、きっとその「空白の三日間」の事が、中古のワープロ機のファイルに綴ってある・・と、直感した。
まぁ、これ以上書くとネタバレになるので、三國の長い人生の三日間の行動は伏せるとしよう。
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それにしても、パーキンソン病が進行し自由の効かない躯で、三國はどこで何をし、誰と過ごしたのだろう?
「どうせ、若い女に決まっている」
と言う意見もあったが、介助や介護が必要な三國に、
「そんなもの好きはいない」
と言う反論の方が、真実味がある。 じゃあ、そんな三國を駆り立てたものは、一体、何だったのだろうか?
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自分のこれまでの来し方を振り返って、「やり残し」がないか、つい暫し考え込んでしまった。 そうしたら、あった! 親から貰う事になっている預金通帳である。 いわゆる「名義預金」だ。 最近はトラブルも多いらしいので、早めに決着を付けておこう。