パーキンソン病/症候群の闘病記です。 同病の方々のご参考になれば幸いです。

idやURLのPSPとはパーキンソン症候群の中の進行性核上性麻痺、PAGFとはPSPの非典型例である純粋無動症の事です。

「沈黙のひと」第五章


衿子は、再婚した実父・三國の四十九日法要に呼ばれた。 新しい家族を持った父の親類の中に自分の知る顔は殆んど無いので、居心地が悪いのは承知の上ではあるが、出席した。 その帰りに、父が晩年を過ごした家を見、父が住んでいた足跡を知る事で、縁(えにし)の薄かった生前の父との距離を縮めたいという思いがあった。

 

所がいざ訪ねて見ると、後妻の華代が衿子に、生前の三國に対する不信感をぶつけてきた。 その中でも最大の不満は、自力歩行さえ盡ならない三國が、三日間不在だった事である。

 

衿子は、きっとその「空白の三日間」の事が、中古のワープロ機のファイルに綴ってある・・と、直感した。

 

まぁ、これ以上書くとネタバレになるので、三國の長い人生の三日間の行動は伏せるとしよう。

 

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それにしても、パーキンソン病が進行し自由の効かない躯で、三國はどこで何をし、誰と過ごしたのだろう?

 

   「どうせ、若い女に決まっている」

 

と言う意見もあったが、介助や介護が必要な三國に、

 

「そんなもの好きはいない」

 

と言う反論の方が、真実味がある。 じゃあ、そんな三國を駆り立てたものは、一体、何だったのだろうか?

 

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自分のこれまでの来し方を振り返って、「やり残し」がないか、つい暫し考え込んでしまった。 そうしたら、あった! 親から貰う事になっている預金通帳である。 いわゆる「名義預金」だ。 最近はトラブルも多いらしいので、早めに決着を付けておこう。