転倒事故5−傷の縫合
そこへ外国人医師が、キャスター付きの台に傷の処置のための器具を並べてやってきた。 彼は私の額に明るい白色燈を当て、
「眩しいから、覆いますね」
と、私の目を白い布で覆った。 後で考えると、処置に対する恐怖感を与えないためだろう。 そして、
「麻酔をしますから、チクッとしますよ」
と言い、傷の辺りに麻酔薬を注射した。 数えてはいなかったが、6ヶ所程度だったろう。 そして、いよいよ傷口の縫合へと移った。
麻酔が効いているので痛くは無いが、針を刺して糸を引いたり結んだりしている感覚はある。 それだけに、余計に不気味である。 ましてや外国人医師が研修医に、教えながら縫合していると・・
全部で6針縫う所、最後の6針目で、研修医が針を落としてしまったらしい。 外国人医師が、看護師に追加の資材を要求していた。 専門用語なのか商品名なのか、私には聞き取れなかったが、看護師もわからなかったらしく、外国人医師がイライラした声で、説明をしていた。
そんな不安はあったが、縫合は無事に終了した。 外国人医師は、私に
「麻酔が切れると、少しチクチクするかも知れません」
と教えてくれた。 それにしても、巧みな日本語である。
その他の自覚症状を訊かれたので、
「腰を打ったらしく、腰が痛いので、湿布を出して頂けませんか?」
とお願いしたら、外国人医師が、研修医に処方を指示した。
傷の処置も終わり処方も決定したので、左腕を固定すれば救急処置は終了かと思われた。 所が、予防注射をする…と言う。
さて、何の予防注射だろうか?