フレンチの匠(2)
さて、アントレとして私は肉を頼んでおいた。 他の5人は、魚だったが・・
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この、左下の肉は牛のフィレ肉のべーコン巻きであるが、中の肉が自身の形をかろうじて維持出来ている程、柔らかい。 そこで、そっと口に運ぶと、口の中でホロホロと崩れてゆく度に、ベーコンの脂が、脂の(少)ないフィレ肉にコクを与え、淡白なフィレ肉にベーコンの適度な塩が味を与え、そこにソースが絡まったら・・ もう
「旨いっ!!!」
しか出ないでしょ!?! 因みに、やけにベーコンが美味しいと思ったら、これまた自家製だそうだ。 道理で・・
そう言えば、アペタイザーの鴨肉も自家での燻製品と言っていた。
では、他の肉は? ナイフがスーッと入るので、フォークで刺して、左下のマヨネーズみたいなものを付けて食べると・・ これまた、
「旨いっ!」
のである。 そのマヨネーズみたいなものとは、ワサビをマヨネーズで溶いたものだ。
「えぇーっ、ワサビって肉に合うの?」
と思った御仁は、ローストビーフにワサビを付けるシチュエーションを思い出して欲しい。
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アントレが終わると、残るはデザートとコーヒーだ。 デザートは、冷果とムースだ。 コーヒーは、炒りの深いヨーロピアンスタイルだ。 ご存知とは思うが「アメリカンコーヒー」とは薄いコーヒーではなく、炒りの浅い豆で淹れたコーヒーのことだ。
但し、女子社員が
「最近、課長の頭(=髪)って、アメリカンじゃない?」
と言う時は、薄い・・と言う意味だ。 (「はげハラ」失礼!)
では、米国で炒りの深いコーヒーを飲みたい時は、何と言うか?
それは、「エスプレッソ」(コーヒー)と言えば良い。
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さて、食事は終わった。
「(さぁ、帰るか・・)」
とは思ったが、女性陣はお喋りに夢中である。 余りにも長いので、途中、トイレに立ったが、結局,3時半になった。 部屋から出ると、ウェイトレス達が掃除をしてい た。 勿論、私達の他に客はいない。 きっと、ランチタイムは3時までなのだろう。 つまり、彼女らの言う「ランチ」とは、「何か美味しいものを食べに行く事」が目的ではなく、「いつまでいても居心地のよい場所でお喋りをする事」が目的なのである。
私達が店内を出口(=入り口、レジがある)に向かって歩いていると、丁度、厨房から人が出て来た。 白い服に白いコック帽を着用した彼は、扉から出ると、伸びをした。 そして、私達に気付いたのか、急にかしこまった。
そして、私達が何かをくぐる様に、歩きながら一礼すると、彼は急に笑顔を作って、コック帽を取って頭を下げた。 体格の良い普通の・・と言うより、寧ろゴツい印象のオジサンである。 この男の手で種々の自家製のものや創意工夫に溢れ、そして繊細な、時としてダイナミックな色々な料理が出来てくると思うと、なぜかギャップを感じてしまう。(私のステレオタイプである。)
そんな、「フレンチの匠」の姿であった。