金冠が取れる・・
ここ数日、舌を当てると、口内に尖った部分がある。 それがどうも金冠の様だ。 左上の5番である。 これは拙い・・と思い、いつもの歯科医院に朝一で電話して診察をお願いした。 すると、その日に可能だ・・と言われたので、午後一の3時を希望したら「大丈夫です」と言う。
「(オイオイ、そんなに空いているのかよ!)」
と、一瞬、不安がよぎった。 それでも家で歯を磨き、2時50分には到着した。 すると、いつもの歯科衛生士のA嬢が窓口にいて、半ば驚いた表情で、
「今日は、歯のお掃除でイイんですよね?」
と言う。 私は、
「いえ、実は金冠が当たって痛いんです」
と言った。 すると、直ぐに呼ばれ、いつもと違う椅子に案内された。 待っていると歯科医がやって来たが、H医師ではなく、もっと若い30代の男性だった。
「どこでしょうか?」
と訊かれ、舌で再確認して指で示した。 すると
「あー、ここですね!」
と言い、金冠を外して、
「(原因は)虫歯ですねぇ・・」
と言った。 それを聞いて、私の脳裏に過去の憂鬱が浮かんだ。 それは・・
- 先ず、歯根にリドカイン(=麻酔薬)を注射し、数分待つ。
- 続いて、虫歯部位や残った接着剤を削り取る。
- 剥離剤を歯に塗って、白い材料で型を取る。 ここで、型が固まるのを待つ。
- 型を外し、金冠の制作を歯科技工士に外注する。
- 一方、歯には臨時に白い詰め物を入れる。
- 更に数日後、再診時に詰め物を外す、
- 歯を洗浄し、接着剤を付けて金冠を付け、脱脂綿をかませて数分待つ。
- 最後に、余分な接着剤を削り取り、仕上げのバフを掛ける、
時間も掛かるし、材料が保険診療外なので、3~4万円も掛かる。
そんな事を思っていると、その若い歯科医はいきなり削り始めた。 私は、やがて襲うであろう激烈な痛みを恐れて、全身が固まり、アドレナリンが体内を駆け巡った。
しかし、現実はその様な痛みは無かった。 歯科医は感圧紙(?)の様な紙片を挟み、何かで押し当てていた。 その後、白く粘稠なものを塗り、何かを入れた。
そして、
「どうですか、当たりますか?」
と訊いたので、私は舌で確かめて、大丈夫な旨を答えたら、
「ハイ、イイですよ!」
と。 私はそれを聞いてビックリした。 そう、既存の金冠を詰め直したのだった。 その結果、私の憂鬱は杞憂に変わった。
治療が終わって待合室に戻り、再び窓口に呼ばれると、1400円だった。 待合室には、中年の女性が一人いただけだった。 きっと、代診なので実績がなく、ガラガラなのだろう。
しかし、日進月歩の歯科医療の世界、若い医師の方が新しい知識や技術を持っているだろうに・・と思った。