パーキンソン病/症候群の闘病記です。 同病の方々のご参考になれば幸いです。

idやURLのPSPとはパーキンソン症候群の中の進行性核上性麻痺、PAGFとはPSPの非典型例である純粋無動症の事です。

抄読会―4(後方バランスとハンガー反射)

さて、今週も友人と抄読会だ。 テーマは下記の論文である。

 

 ・ 「聴覚および視覚刺激が健常成人の後方ステップ動作に与える影響」、今野太陽(こんのもとはる)ら、Yamagata Journal of Health Sciences, Vol.17,pp.25-32,2014

 ・ 「運動と情動を制御する触覚インタフェース」、梶本裕之、基礎心理学研究,Vol.32, No.1, pp.120-125, 2013

    

先ず前者の論文であるが、COM(Center of Mass、身体重心)とCOP(Center of Pressure、足圧中心)の違い(COP-COM)をベクトルとして、後方にステップする時の遷移図を描いている。 この時、聴覚刺激や視覚刺激を被験者に与えた時のパラメータ(歩行率、歩幅等)を無刺激時と統計的に比較している。

 

勿論、その先にはパーキンソン病患者の後方ステップの改善、もっとハッキリ言えば後方転倒の予防がある(と思われる)。

 

結果は、意外だった。 と言うのは、聴覚刺激と視覚刺激の作用点が異なるらしい。 例えば、「前者は両脚支持期のステップ動作前のAPA期に作用し、その間のCOP-COM距離の延長に有効に働く。 一方、後者は後方ステップ動作前のAPA期の蹴り出し力とステップ後半の両脚支持期のCOM後方移動速度に対し有効に働く」と言う。 尚、APAとは「anticipatory postural adjustment」の略であり、「予測的姿勢調節」と訳される。

 

即ち、両刺激は代替可能なもの・・と言うより、相補的なものに成り得る・・と考えた方が良いのかも知れない。 PSP-PAGF患者でも同様であれば、訂正しなけれればならない。

 

   http://psp-pagf.hatenablog.jp/entry/2015/12/26/071319 の(4)

 

と言うのは、質的に異なるもの(視覚キューと聴覚キュー)とを比較して優劣を論じても、余り実にならないからである。 (効果・・と言う点では、議論できても。)

 

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次に後者の論文であるが、面白い現象の紹介がある。 それは、「ハンガー反射」である。 (この命名は、著者によるものらしい。)

 

背広をクリーニングに出すと、針金ハンガーが付いて来る。 このハンガーの幅を広げて頭に被ると、頭部が不随意に回転する。 この現象を、「ハンガー反射」と呼ぶ。 つまり、頭皮への接触刺激が首の運動を誘発したのである。 

 

俄かには信じがたいので、実際にやってみたら、その通りだった。

 

その他、色々な刺激による運動誘発(→制御)の例や、立毛による情動制御の例がある。

 

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そして、もう一報を紹介してくれた。 それは、

 

 ・ 「大脳基底核による運動の制御」、高草木薫、臨床神経学, Vol.49 No.6,pp.325-334, 2009

 

である。 これは総説であり、将に今、私の症状がこの「基底核の障害」と納得させるに十分な内容である。 

 

   https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/49/6/49_6_325/_pdf

 

非常に分かり易いので、一読を薦めたい。