冬の秩父路(3)-鈴ひろ庵
で、皆が満腹で満足の内に、車は「道の駅荒川 鈴ひろ庵」に向かった。 途中、低木と高木が並んで網の中に見えた。 きっとここが、四女が話していたブルーベリー畑とキウイ畑なのだろう。 「(自家栽培で)500円玉位のブルーベリーの実が採れる」と言っていた。 そう言えば、「ブルーベリー狩り」も出来るらしい。
まぁ、冬の夕方なので車は少なかったが、店内には他の客もいた。
店の入り口には、ソフトクリームの模型が置いてあり、その横にはメニューが並んでいた。 見ると10種類以上ある。
早速店内に進み、自販機で四女オススメのバニラソフトの券を5枚買い、カウンターに出すと、ブルーベリーを載せて良いか・・と訊かれた。 勿論、鈴加園の紹介で来た事を添えるのを、忘れなかったので、きっとサービスなのだろう。 運ばれてきたバニラソフトの上には、丸いブルーベリーのアイスが載っていた。
そればかりか、その脇にはブルーベリーの果実が4個程、添えてある。 一つ口にすると、唇にヒンヤリした感触があり、噛むとサクッとした。 そう、冷凍ブルーベリーである。 それはやがて口中で融けて、爽やかな酸味を放った。
さらにその脇には3cm程の淡い褐色の物体が、へばり付く様に添えてある。 これは一目で、無花果のコンポートと分かった。 そう、鈴加園のデザートで経験している。 これを、「学習効果」と言う。
そして果皮が散見されるブルーベリーソフトを一口食べただけで、手作りと分かった。 夏の間に育った果実を、こうやって真冬に楽しめるとは!
―――――――――――――――
「地産地消」と言う言葉があるが、これはその究極の進化系、「自産自消」とも言うべき形であろう。 しかし、早春の剪定から始まり、晩秋の収穫に至るまでのプロセスだけでも大変なのに、それを種々加工し、お客に提供出来るまでのレベル(=商品)にする。 それがどれ程大変な事であるのかは、想像に難くない。
三女の話は聞かなかったが、きっと何らかの形で関与しているのだろう。
「母だけでは、大変だから・・」
と四女が言う通り、姉妹が揃って父の仕事を手伝っている・・と聞けば美談であるが、まぁ、婿を貰った長女も含め、私はそれだけでは東京から次女が単身赴任でここを切り盛りしたり、本庄に小さい子を置いて四女が鈴加園まで給仕に通ったりは出来ない・・と思った。
では、他に何が?
それは・・ お金であろう。 勘ぐり過ぎと言われるかも知れないが、鈴加園で食事代を払った時、確かにレジを開けて釣り銭を出したが、レジを打っていなかったのである。