リハビリ224―オーストラリアの首都は、ウィーン!?!
S士は私にこんな質問をした。
「絵は、描いていますか?」
つまり、巧緻作業は継続しているか・・と言う質問なのだろう。 私が
「えぇ、描いてますよ。 最近は(水彩絵の具でなく)クーピーを使ってますけど」
と答えると、S士は少し笑顔になり、
「あぁ、クーピーね!」
と言った。 S士はクーピーを知っていたのだった。 「塗り絵=クレヨン」だった私との世代の違いを感じてしまった。
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更にS士は質問を続けた。
「何か、お困りの事は?」
「声が出難いんです」
すると、S士は棚から薄いA4のテキストを取り、私に復唱するように指示した。
「オーストラリアの首都ウィーンは、芸術の都とも呼ばれている。 たとえば日本でも有名な『ウィーン少年合唱団』は・・」
と言うページを探し当て、発音の練習に入った。 S士が1音節ずつ読み上げるので、私が続いて発音する。
「オーストラリアの」・・「オーストラリアの」、「首都」・・「首都」、「ウィーンは・・ あれ? これって、オーストリアですよね???」
と言いつつ、そのページを私に見せた。 すると「オーストラリア」の『ラ』に鉛筆で×が書いてあった。
まぁ、発音の練習なので、『ラ』の有無は問われない。 著者は日本語にはない「ラリ」の練習のために、わざわざ「オーストラリア」としたのかも知れない。
で、テキストの同ページの上の方ほうには、「水曜日の練習」と書いてあった。 そしてリハビリ終了時にテキストの表紙を見たら、「脳挫傷のための・・」とあった。
こうして、本日の作業療法も終了した。 時計を見ると、定刻より5分遅れである。 15分遅れで始まって・・