診察201401―3
S医師が指した画像は、輪郭は対象なのに、色が非対称である。
「ここね、右頭頂部の血流が悪いのは・・」
よく見ると、確かに左半分は虹の七色で彩られているのに右は真っ暗だ。 私は、焦った。
「でもこれは年齢的なものだと思うんです。 パーキンソニズムの症状とは、関係の無い・・」
と、S医師は説明したけれど、患者にとっての問題はそれが何の病気でどの様な症状が出て、ADLやQOLにどの様な影響を持つか・・であり、パーキンソン病関連疾患との関係や確定診断(のための確証や傍証となる事)ではない。
「と言う訳なんで(、確定診断に至らなかったんで)す・・」
と残念そうに言った。 しかし、私はこう述べた。
「あぁ、良かった! 余り所見も無い様で、安心しました。」
「そうですよね!」
と、妻も賛意を言った。
と言うのは、PSPの脳MRIでHumming Bird Signが顕れるのは、後期になってからである。 それにPSP-PやPSP-Cなどの典型例ならまだしも、症例の少ないPSP-PAGFでは、そこまでまだ分かっていない(=教科書的な記述は無い)様だ。
S医師の言いたかった事は、折角確定診断のために時間も費用も掛けて検査をしたのに(申し訳ないが)、有用な情報は得られなかった、従って現段階での診断名は、依然「パーキンソン症候群」である・・と言う事だろう。
難しい病気に罹ったものである。