調停―5
そんな9月上旬の某日は、第2回目の調停の日だ。 妻と私は少し早目に家をでたので、開始時刻の30分以上も早く簡易裁判所に着いた。 そこで階段を登り、出頭の旨をテーブル上の紙片に記入し、指定の待合室の扉を開けた。
まぁ、到着が早すぎたので一番だったのは予想通りだが、エアコンが入っていないのである。 9月に入ってまもないので、流石に部屋が蒸している。 そこでエアコンの室内機のスイッチを探したが、見当たらない???
仕方なく妻が一旦待合室を出て、廊下を通った女性職員に尋ねた。 すると職員は、
「少々お待ち下さい」
と言い、別室に消えた。 今度は室内機から音がして、冷気が出て来た。 つまり、集中管理方式なのである。
漸く涼しくなったので書類を広げて、予習を始めた。 すると、定刻に調停委員が顔を出し、我々の在席の確認をした。
問題はそれからである。 相手方の時間が長いのである。 内容は単純で、「登記識別情報通知書」の法的帰属は明らかなので、「チャンと、申立人に返せ」と調停委員が相手方代理人の弁護士を説得していた様である。
それが分かったのは、次回の調停日を決める時に、同席をしたからである。 一般的に、申立人と相手方が調停の場で顔を合わせる事はない。 それなのに、調停委員が同席を促したのは、単に日程調整のためだけで無い・・と感じた。 それは、次回の期日決定後に、次の言葉を申立人に聴かせるためだったのかも知れない。
「じゃぁ、代理人は次回までに書類を持って来られる様に、相手方を説得し・・」
「ハイ、説得します」
もう、調停委員が当方の「味方」とすら、感じられた。 本来は「正義の味方」なのだろうが・・