調停―3
調停開始時刻が近づくと、更に二人増えた。 皆、白いYシャツを着た、会社員風だ。 やがて、調停委員が次々と呼びに来て、部屋には我々だけになってしまった。 すると定刻になり、最後に「○○さん?」と、50歳位の男性が呼びにきた。
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調停室に入ると、もう一人の調停委員がいた。 やはり、50歳台後半の男性だ。 後で分かったのであるが、この男性は土地の登記事情に詳しかった。 事件の内容に沿った陣容なのだろう。
一方、相手方は弁護士だけだった。 まぁ、身内の事まで「弁護士任せ」と言うのも、調停委員には心証は良くないだろう。
さて、調停の内容は非公開なのでここに詳述する事は差し控えるが、我々申立人に対する調停委員の心証は極めて良く、我々のために頑張ってくれた。
それが分かったのは、帰宅後だった。
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調停が終了し自宅に戻ると、弁護士から封書が届いていた。 開封すると、答弁書のコピーと受領書の原本が入っていた。 その答弁書には、申立人に対し「アレもだめ、コレもだめ」と書いてあった。 調停委員は相手方に対して、そのうち一つ(登記情報通知書の引き渡し)を除いて、他の要求を認めさせてくれたのだった。
「頑張ってくれた」と言うのは、この事だ。
その封書の消印は、調停日の前々日だった。 つまり、調停期日の前日に届き、相手に反論を考える時間を与えないつもりだろうが、それが却って裏目にでた。 つまり、逆に申立人に次の調停期日までの約一ヶ月間の余裕を与えてしまったのだ。 勿論私は、これをチャンスとして活かす積もりだ。
そんな姦計が明らかになったのは、申立に対する答弁書の日付が調停日の10日前になっていたからだ。