リハビリ25―「少し負荷をかけてみましょう。」
私に両手で平行棒を摑ませて、Y士はこう言った。
「今回は、少し負荷を掛けてみましょう」
そして片足を一歩、前に出して、スキーのジャンプの格好をした。 確かにこの体勢だと、体重は前に出した足に殆どかかっている。 Y士の言う「負荷」とな、この事らしい。 しかし、特別大変な姿勢でもない。
Y士は私の姿勢を細かくチェックし、修正しながらこう指示した。
「片手を(棒から)離してみて下さい。」
そこで私が左手を離したら、その様子を見たY士は、
「もう片方(の手)も、離してみて下さい」
と言った。 きっとY士が予想していたより、上手に出来たのだろう。
「ハイ、もういいですよ」
と告げた後、Y士は私にこんな事を言った。
「病気に囚われてはいけません。」
私は日常、余り悲観的には思っていない。 確かに歩行は不便だし、動作は遅い。 しかし、日常生活の90%以上は独立してできている・・と思っている。 事実、「リハビリテーション総合実施計画書」の各項目には、100%と書いてある。
それでも、第三者から見るとこの病気に対して、悲壮的に思っている様に見えるのだろうか? リハビリにも積極的に取り組んでいる積りだし、家庭でも、宿題をこなしている。
Y士の言葉は意外だった。
本来ならY士の意図する所を説明して貰い、リハビリだけでなく日常生活に対する心構えを訊くべきだったのだろう。
私も聞き逃してしまった訳ではない。 心の底に澱んだままにしておいてはならないと思っている。