診察201207-2
「ネズミなんかは、見えないですよね?」
ええっ? ネズミが診察室にいるのかと一瞬、見回しそうになってしまった。 しかし、幻視・幻聴の有無を尋ねてきたのであったと分かった時、手品の種明かしを見た様だった。 そして、夜中に奇声をあげることもないのを確認して、I医師は問診を終えた。
でも、その様な精神症状も、パーキンソン病(症候群)に頻出するのだろうか? 自分が自分でなくなってしまう様な恐怖がある。
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続いて、I医師は私の両腕を前に出させ、目を瞑る様に指示した。 その後、タッピングテストと眼振のテストを実施した。 後者は医師が上下左右に動かすペンを、患者が目だけで追うのであるが、I医師は今回初めてその評価を語った。
(うん、大丈夫ね!)
小声ではあったが、私は聞き逃さなかった。
更に、左右の肘と手首の歯車様固縮を調べた後、診察室内の歩行の様子を観察した。 私はリハビリでY理学療法士に教えて貰った通りに歩いて見せた。 I医師は、
「私が見ていると意識するせいか、(チャンと)出来る(=歩ける)のよねぇ・・」
とコメントをしたが、それ以上のツッコミはなかった。
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時間も経ったので、私は、
「連れを呼んで、イイですか?」
と断り、待合室に、整形外科から戻った妻を呼んだ。 そして妻の入室後、この8週間を報告するメモを渡した。 メモは、妻のカバンに入っていたのだった。
そこには、こんな風に書いて置いた。