パーキンソン病/症候群の闘病記です。 同病の方々のご参考になれば幸いです。

idやURLのPSPとはパーキンソン症候群の中の進行性核上性麻痺、PAGFとはPSPの非典型例である純粋無動症の事です。

転倒事故6−破傷風の予防注射

私は再び車椅子にもどされ、暫くすると、外国人医師が

 

   「怪我をした所は、綺麗な所だったとは思いますが、念のため破傷風の予防注射をしておきましょう」

 

と、小さなバイアルを持ってきた。 いざ注射の段になって私は不安になり、看護師に訊ねた。

 

   「破傷風の予防注射って、血清が使ってありますよね? 私は小さい頃ジフテリアに罹り、抗血清の注射を受けているので、アナフィラキシーが心配なのですが・・」

 

すると看護師は、私が子供の頃に受けた予防ワクチンとの相互作用を心配していると思ったらしい。 少しトンチンカンなやり取りが続き、看護師はどこかに消えた。 きっと、医師に相談しに行ったのだろう。 数分後に戻った看護師は、

 

   「では、注射後15分間は病院にいる事にしましょう。 (アナフィラキシー)反応が出るとしたら、5分か、10分後ですから」

 

と言い、その0.5mlをシリンジに取り、右肩に筋注した。 そしてタイマーを掛けて、別室に案内した。 救急外来には、もう次の患者が運び込まれていたからであろう。

 

そして、15分後に当の看護師がやってきて、総合受付に行く様に促された。 つまり、通勤途中の怪我なので労災が適用され会計はゼロ円であるが、労災申請書を会社から貰ってきて欲しい・・と言うのである。 これが、後々のトラブルとなるのである。

 

そして、

 

  「では明日、整形外科と形成外科を受診して下さい。 整形外科では骨折を、形成外科では額の傷が化膿していないかどうかを診ます」

 

と言われ、左腕を三角巾で吊り、その上からベルトで腕と三角巾を固定した。 これで、完了である。 医師は勿論、看護師にも大変お世話になった。 看護師の名札を見ると、「KM」とあった。

 

総合受付で労災関係の書類を受け取り、妻が処方箋を院外薬局に出して湿布薬を受け取りに行った。 その間、総合受付で待っていると、処置に当たってくれた外国人医師が私の車椅子の背後から歩いてきた。 勿論、後ろからなので、私は気付かなかった。 そして、彼は私を見つけるなり、

 

   「大丈夫ですよ」

 

と小声で言い、指先をそっと私の肩にふれた。 急な事だったので、私は咄嗟にお礼の言葉すらでなかったが、優しい目であった。