ビ・シフロールの処方
さて、パーキンソン病かと思われたがMIBG検査がそれを否定し、多系統萎縮症の可能性も出てきた。
こんな場合の薬物療法は、どうしたらよいのだろう。 いやその前に治療方針を確立しなければならない。
いずれの病気であっても(脳神経の病変の)進行は不可逆的なので、症状の緩和が治療の中心となる。 そして投薬などの治療により、男性の平均余命である85歳まで、ADLとQOLを高いレベルで維持する事がその目標となる。 それが実現できれば、それはそれで「寛解」とも言える。 (T医師の受け売りです。)
そのための薬物療法として、T医師は
「ビ・シフロールと言う薬を使ってみましょう」
と、私に言った。
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この薬は、線状体におけるD2アゴニスト(=作動薬)である。 黒質緻密部でL-DOPA(L-dioxyphenylalanin)から脱炭酸酵素により生じたDopamineは、線状体に対して興奮性にも抑制性にも作用する。 また、同じ興奮性でも反応が異なる。 そこで、線状体におけるレセプター(=受容体)をD1やD2・・と、機能で分類するのである。
・・と言う事は、処方薬は抗パーキンソン薬である!?! パーキンソン病の可能性は否定されたハズ???
私の勝手な想像を許して戴ければ、この処方には次の二つの理由が考えられる。
? パーキンソン病と(多系統萎縮症に起因する)パーキンソン病症候群との臨床的な区別は、難しい。 しかし両者では、抗パーキンソン薬に対する反応性が異なる。 この事(=反応性の差)も確定診断の一助となると考えられる。
しかし極論を言えば、病名なんて何でもよいのである!
? 病気(病因)が何であろうが治療(投薬)により症状が緩和し、不都合なく日常生活(社会生活や家庭生活)が送れれば、それは「完治」とも言える。 (これも一部、T医師の受け売りです。)
つまり診断と治療とは、別ものものである。 「診断はサイエンス、治療はアート」と言われる所以(ゆえん)だ。
参考文献 : http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1169012.html