パーキンソン病/症候群の闘病記です。 同病の方々のご参考になれば幸いです。

idやURLのPSPとはパーキンソン症候群の中の進行性核上性麻痺、PAGFとはPSPの非典型例である純粋無動症の事です。

抄読会―7

なぜ、その後ろにPro(プロリン=Proline)がわざわざ書いてあるか・・

 

これには、Pin1と言う酵素が関係してくる。 このPin1と言う酵素は、このThr231-Proの位置でP-tauの立体構造をcisからtransへと変換すると言う。 では、この変換はどの様な意味を持つのか? 

 

Pin1はアルツハイマー病の細胞やマウスの病態モデルで、アルツハイマー病におけるtauopathy(タウオパチー=タウ蛋白の変性に起因する病気)を抑制する。 つまり、このcis P-tauが減少すれば、疾病の進行を抑制できる可能性がある。 

 

この論文では、このcis P-tauを特異抗体で潰そうと言うのである。 これにより、脳損傷やtauopathyをブロックする事が可能だ・・と言っている。 

 

では、なぜこのtauopathyが重要か・・と言うと、私の罹患するPSP(進行性核上性麻痺)も、AD(アルツハイマー病)と同じtauopathyの一種だと考えられているからだ。

 

蛇足ではあるが、このProは蛋白を構成するアミノ酸の内、唯一2級アミノ基を持つため、蛋白の高次構造を決める大きなファクターの一つになる。 つまり、その隣のThr231の側鎖がリン酸化される事により分子の荷電状態が変わり、隣接するProの所でcis化し易くなる・・と言うのである。 

 

ついでに、もう一つ蛇足を。 ボクシング選手の様に、頭部に日常的に物理的刺激を受けている人は、アルツハイマー病等の神経変性性疾患の罹患率が高くなる・・と言う統計がある。 この状態を脳損傷(brain injury)と言う。

 

例えば、ご記憶に新しいと思うが、この6月3日に元ボクサーのモハメッド・アリ氏が亡くなられた。 彼が晩年、パーキンソニズムに苦しんだことはよく知られている事で、その原因としてボクサー時代に強烈なパンチを喰らったことが取りざたされている。 もちろん、因果関係の証明はできないが可能性が高いことは確かである。

 

尚、パーキンソン病においては、脳神経細胞の脱落の原因として、「4-RT」(4-Repeat Tau

の過剰によるNFT(neurofibrillary tangles)の蓄積があり、PSPと同様にtauopathyの一つと考えられている。 勿論、PSPも4-RT(変異による疾病)の一種であるし、AD(アルツハイマー病)においては、3-RTと4-RTが等量出現すると言う。

 

所で、P-tauの高次構造が、Pin1と言う酵素によりcisからtransに変換される・・と書いたが、夫々の立体構造が解明されている訳ではない。

 

難しい話しは、これ位にしておこう・・